AIチャットボットのすべて!導入前に知るべき6つのポイント
「カスタマーサポートの業務負担を減らしたい」「顧客エンゲージメントを改善したい」「問い合わせを少しでも増やしたい」
これらはビジネスにおける課題であり、共通性がないように見えますが、全てはAIチャットボット導入によって解決できるものです。
一体、AIチャットボットにはどのようなメリットがあり、どのような効果をもたらすのでしょうか。その秘密について解き明かしていきます。
目次
- AIチャットボットとは?
- AIチャットボットが普及している背景と市場規模
- 従来のチャットボットとAIチャットボットの違い
- AIチャットボットの回答が的確である仕組み
- AIチャットボットを導入する3つのメリット
- カスタマーサポートの負荷を軽減する
- 顧客との接点を増やして、取りこぼしを防ぐ
- ユーザーに提案し、問い合わせを案件化する
- AIチャットボットの活用事例
- 事例1.航空会社:ハワイ旅行でお役立ち情報をレコメンド
- 事例2. Q&Aサイトの恋愛カテゴリー:最適なアドバイスを提供
- 事例3.テレビ局:ドラマの主人公と疑似会話してファン増加
- 事例4.旅行比較サイト:各ユーザーに合わせて多彩なプランを提案
- AIチャットボットの料金比較18選
- ECサイト・マーケティング支援もできるマルチタイプ
- カスタマーサポートに特化
- 顧客&社内ヘルプ支援の両方に実績あり
- 社内のヘルプデスク支援に強み
- 施設案内にも対応可
AIチャットボットとは?

そもそもチャットボット(chatbot)とは、「チャット」と「ボット(ロボットの略語)」の2つの単語を組み合わせた造語です。
チャット自体は、『LINE』のように文字をリアルタイムでやり取りできる仕組みで、ボットとは、同じ処理をプログラムで自動化することを意味します。
このように従来のチャットボットは、ユーザー側からの質問に対し、あらかじめパターンを仕込んでおいたプログラムによって回答が導き出されていました。すると、プログラムされていない質問に対して返答することが困難でした。(このため「人工無能」という別名もあります)
一方、AIチャットボットは、文字通り「AI(=人工知能)」を搭載したチャットボットです。
2016年3月、AI囲碁プログラム『AlphaGo(アルファ碁)』が、世界戦で18回も優勝経験のあるトップ棋士、韓国のイ・セドルを相手に4勝1敗と勝利したことは当時、世界的な話題となりました。
このプログラムに採用されたのが「ディープラーニング(深層学習)」と呼ばれる技術で、これをきっかけに最近のAIチャットボットにも、同様の技術が使われるようになりました。
これにより、どのような質問に対しても、話し手の言葉を理解した上で回答するため、チャットボットの課題であった“自然な対話”が提供できるようになったのです。
AIチャットボットが普及している背景と市場規模

AIチャットボットがここまで普及したのは、各大手IT企業が技術者向けに公開した開発プラットフォームやAPI(※1)がきっかけと言えます。
※1.「API」とは、”Application Programming Interface”の略で、汎用性の高い機能をプラットフォーム側で開発・提供する仕組み
2016年4月、Facebookが開発プラットフォームのリリースと同時に自動ボットのAPIを公開。同じ月にLINEはトライアル版のAPIを公開し、同年9月から正式版を公開。またマイクロソフトやIBMも同じ年にそれぞれ開発プラットフォームなど独自のボットサービスを公開しています。
企業側はこれらのプラットフォームを用いてAIチャットボットを活用し、商品・サービスに関するFAQを24時間自動で応答できたり、電話やメールに頼らない商品・サービスの見積もりの提供、ECサイトでの商品購入サポートなど、様々な形の価値を提供できるようになりました。
また、矢野経済研究所が2018年に実施した調査によると、国内におけるAIチャットボットの市場規模が年々増加することを予測しています。
調査内容には、2020年東京オリンピック・パラリンピックの開催時の国内の対話型AIシステムの利用拡大を見込んで市場規模は87億円。さらに2022年には1.5倍の132億円まで拡大すると予測(※2)。
大会開催時には日本の先端技術のPRや対話型AIの多言語対応の需要が挙げられますが、企業としては業務効率化の実現や商品・サービスの売上向上を目的とした活用が考えられます。
AIチャットボットは、企業側とユーザー、双方のコミュニケーションの架け橋となり、また双方にメリットをもたらします。そして市場規模の拡大が見込めることからも、導入を検討する企業がますます増えてくることでしょう。
※2.参考:矢野経済研究所「国内の対話型AIシステム市場は今後5年で10倍以上の規模に拡大する見通し」
従来のチャットボットとAIチャットボットの違い

ここでは従来のチャットボットを、「あらかじめ用意した言葉や会話のパターンをプログラムに取り込んだチャットボット」と定義して解説を進めていきます。
チャットボットの歴史は古く、1966年にコンピュータ開発者によって発表された『ELIZA(イライザ)』から始まりました。その後、様々なチャットボットが開発され、進化していきます。
ただ、チャットボット側では会話を機械的に処理して回答するため、会話の継続や共感し合える対話の実現には限界がありました。
当社が2019年に実施した「チャットボット実態調査」のなかでも、ユーザーが不満に感じている点が浮き彫りとなりました。
- 回答が的確ではない(57.4%)
- 会話が機械的で不自然(44.6%)
- 会話が途切れる・続かない(39.5%)
- 無理のあるおすすめ(提案)をされた(18.1%)
- おすすめ(提案)されるコンテンツがつまらない(12.5%)
- 売り込み・宣伝文句が多かった(5.0%)
※出展: 自社調査「チャットボット実態調査」レポート2019より
アンケートの最も多かった答えに「回答や会話」に関する不満が多いことがわかります。
「回答が的確ではない」「会話が機械的で不自然」ということから、従来のチャットボットでは、人間同士のような対話を実現するには難しく、これが従来型の課題となります。
この課題を解決してくれるのがAIチャットボットですが、一般的に次のような特長があります。
- 人と話しているような自然な対話の実現
- AI技術(ディープラーニング)を調整して、より回答の精度向上
- 未設定の発話、特定のテーマ外の雑談にも対応
どうして、ここまで飛躍的な改善がなされたのか、少しだけお話しします。
AIチャットボットの回答が的確である仕組み
従来型のチャットボットには様々な種類がありますが、基本的にはあらかじめ設定された回答(シナリオ)を選択して、その後の会話では定型文がアウトプットされる仕組みです。
これはユーザーの質問に対してうまく合致したときは良いのですが、人間が行うような感情的な対話には意図をくみ取ることができず、極めて機械的な回答しかできません。
一方、AIチャットボットは、ユーザーの意図をくみ取り、共感を見せながら応える自然な対話が可能になりました。これは、AI技術の発展によるところが大きくあります。
自然な対話のできるAIチャットボットには膨大な知識の用意と、その知識に基づいた高度な推論が必要になります。それを「機械学習」と「ディープラーニング」というこれらのAI技術により可能になったのです。
※参考:自社資料「進化するAIチャットボット最前線」より
AIチャットボットを導入する3つのメリット

AIチャットボット導入の主なメリットをまとめると次の3つが挙げられます。
- カスタマーサポートの負荷を軽減する
- 顧客との接点を増やして、取りこぼしを防ぐ
- ユーザーに提案して、問い合わせを案件化する
それでは1つ1つわかりやすく説明していきます。
カスタマーサポートの負荷を軽減する
AIチャットボットを活用することで、カスタマーサポートのオペレーターが対応する、よくある比較的簡単なお問い合わせを軽減し、業務効率の改善につなげることができます。
すると、限られたオペレーターの人員を重要度の高い、より複雑なお問い合わせに時間を割けるようになり、結果的に顧客満足度の向上にもつながります。
さらにチャットボットは24時間365日稼動します。
「電話が面倒、あるいは苦手」「メールでの返答待ち時間を減らしたい」などの要望を持つお客様の満足度を上げて、将来の顧客につなげる可能性も高まります。
顧客との接点を増やして、取りこぼしを防ぐ
商品やサービス選びに悩んでいる方が「今すぐ知りたい!」という要望に応えてくれるのが、AIチャットボットの24時間365日対応です。
ユーザーの疑問・質問に回答する機会を逃さず、AIチャットボットが、スピード感を持ちながら、しっかり対応することでお客様につなげる可能性を高めます。
実施したアンケートの結果でも、チャットボットを提供している会社やブランドについて半数近く(49.6%)が「知らなかった」「好きではなかった」と回答しています。
- もともと好きな会社・サービス(ブランド)だった:40.8%
- もともと知ってはいたが、好きな会社・サービス(ブランド)ではなかった:28.9%
- 知らない会社・サービス(ブランド)だった:20.7%
- その他:9.6%
※出典:自社調査「チャットボット実態調査」レポート2019より
接点のない状況でも、AIチャットボットのおかげでユーザーとの対話が生まれたことがわかりますね。
ユーザーに提案し、問い合わせを案件化する
AIチャットボットは商品やサービスを選んでいるユーザーに対し、提案することもできます。
「何となく外食したい」「場所は決まっていないけど旅行したい」などの目的が決まっていないユーザーとの対話から、最適な情報やプランをAIチャットボットがお勧めを提案し、ユーザーの意思決定のサポートをしてくれます。
またAIチャットボットの特長でもある「自然な対話ができる」ことが、結果として問い合わせを案件化につなげやすくなる、というメリットもあります。
通常の電話やメールと違い、AIチャットボットの場合、敷居を下げて気軽に会話をすることができます。
最初、ユーザーがちょっとしたことをAIチャットボットで話していくと、次第に深い話しに進むという傾向があります。事例としては下記のようなものが挙げられます。
AIチャットボットの活用事例

ここでは具体的に企業の導入・活用した目的やその手法、そしてもたらされた結果についてお話ししていきます。
事例1.航空会社:ハワイ旅行でお役立ち情報をレコメンド

ポイント
- 新たな顧客体験を創出し、顧客エンゲージメント(関係性構築)向上
- ハワイ旅行予約への送客(コンバージョン)を実現
全日本空輸株式会社(ANA)様のハワイ旅行キャンペーンサイトにAIチャットボットを導入した事例です。
コンセプトは「ハワイの新しい魅力を発見してもらう」というもので、応答するチャットボットには今回のキャンペーンのキャラクターを起用しました。
訪れたユーザーは、ハワイのおすすめ観光スポットや現地で役立つ飲食店の情報など、提案を受けることができます。
同サービスでユーザーとの膨大な数に及ぶ蓄積された会話データは、ディープラーニングによって、より精度の高い対話改善に活かされました。
また、ハワイのおすすめ飲食店の情報については、レストラン検索・予約サイトが提供する2000以上ものデータが採用されました。
結果、顧客エンゲージメントの向上、およびハワイ旅行の予約コンバージョン向上へとつながったのです。
事例2. Q&Aサイトの恋愛カテゴリー:最適なアドバイスを提供

ポイント
- 恋愛という正解のない質問に対して、最適なアドバイスを行う
- 複数の文章を組み合わせて、自然な回答を提案する
当社運営の『教えて!goo』サイトの「恋愛カテゴリー」にAIチャットボットを導入した事例です。
『教えて!goo』に蓄積された3000万件のQ&Aデータを活用して、単語の意味、Q&Aの対応関係、回答文の組合せをディープラーニングによって学習させて、モデルを作り上げます。
するとマッチング度の高い情報を抽出して、最適な回答を導き出します。
AIチャットボットの特長であるユーザーに「共感」を与えるような、人間らしい自然な回答を行います。
事例3.テレビ局:ドラマの主人公と疑似会話してファン増加

ポイント
- 顧客エンゲージメント向上(結果、友だち登録数44万人・総発話数1億回以上)
- AIキャラクターとユーザーだけの会話が生まれ、ユーザーはドラマの世界観をより楽しめる
日本テレビ放送網株式会社(日テレ)様が放送した、テレビドラマの主人公をキャラクターとしてAIチャットボットで活用した事例となります。
ユーザーは、LINE公式アカウントから「友だち」登録することで会話可能になります。
LINE上で、テレビドラマの主人公がまるで各ユーザーと友人のように自然な対話を楽しむことができます。
また、AIチャットボットはドラマの中での主人公の成長に合わせて学習し、より賢くなります。
その結果として、LINEの友だち登録数が44万人、総発話数が1億回を超えて、顧客エンゲージメントを向上させることができました。
ここではテレビドラマの主人公を活用した例ですが、これは企業やご当地のキャラクター、そしてアニメキャラクターにも活用できますね。
事例4.旅行比較サイト:各ユーザーに合わせて多彩なプランを提案

ポイント
- AIチャットボットがユーザーに提案し、旅行予約につなげる
- ユーザーとの対話から趣味・趣向をつかみ、最適な提案をする
当社の運営する旅行比較サイト『goo旅行』にAIチャットボットを設けたケースです。
旅行目的がそこまで明確ではないユーザー(例えば癒やされたい、ゆっくりリラックス等)に対して、このユーザーの気分を推察し、最も最適な旅行プランを提案します。
ユーザーの回答があいまいだった場合、「日本三大庭園を訪れる」「ピクニックができる公園」など選択肢を提案。そこから文脈に沿った対話を繰り返すことでAIが本当にやりたい旅行を深掘りして、最適な提案をします。
ここでは当社で運用する『goo』のあらゆるデータ(Q&A、旅行体験記事、イベント情報、地域情報など)からAIが情報を収集して、最適な解へと導きます。
この結果、予約サイトへの送客につながりました。
AIチャットボットの料金比較18選

AIチャットボットのサービスを提供している各社の料金を調べました。ただそのサービスの特徴や強みだったり、また導入の規模感によって料金は様々です。
ここではわかりやすく各サービスを主な役割別にジャンル分けして掲載します。興味のあるサービスからご覧ください。
マーケティングやECサイトにも活用可能なマルチタイプ
No | サービス名 | 主な強み | 料金 | 無料 | 企業名 |
1 | goo AI x DESIGN (AIクロスデザイン) | カスタマーサポート、ECサイト支援、マーケティング活用、キャラクターによるエンゲージメント向上 | 非公開 | × | NTTレゾナント株式会社 |
2 | スグレス | カスタマーサポート、社内ヘルプデスク支援、ECサイト支援 | 初期費用 50万円/ 月額費用 9.4万円〜 | × | 株式会社 ALBERT (アルベルト) |
3 | DialogPlay | ECサイトの商品選定のフォロー・アフターサポート、カスタマーサポート、社内ヘルプデスク | ライトプラン 月5万円/ スタンダードプラン 月8万円 | ○ | TIS株式会社 |
FAQ対応や業務効率化に特化
No | サービス名 | 主な強み | 料金 | 無料 | 企業名 |
1 | KARAKURI | カスタマーサポート | 非公開 | × | カラクリ株式会社 |
2 | AIChat for touching | カスタマーサポート | 非公開 | × | 株式会社KDDIエボルバ |
3 | CHORDSHIP (コードシップ) | カスタマーサポート | スタンダードモデル月額12.5万円 (有人チャット3席分) | × | 富士通株式会社 |
4 | Corproid | カスタマーサポート | 非公開 | × | 株式会社SyncThought |
カスタマーサポート&社内問い合わせ対応などへの実績あり
No | サービス名 | 主な強み | 料金 | 無料 | 企業名 |
1 | QA ENGINE | カスタマーサポート、社内ヘルプデスク支援、オペレータの回答支援 | 初期費用0円/ 月額費用30万円~ | × | 株式会社Studio Ousia |
2 | CAIWA Service Viii (ヴィー) | カスタマーサポート、社内ヘルプデスク支援 | 非公開 (ナレッジベース容量ごとにプランを用意) | × | 株式会社イクシーズラボ |
3 | sAI Chat | カスタマーサポート、社内ヘルプデスク支援 | 初期費用50万円~ /月額費用20万円~ | × | 株式会社サイシード |
4 | AI-FAQボット | カスタマーサポート、社内ヘルプデスク支援 | 月額60,000円 (別途、初期費用と年間費用が必要) | ○ | 株式会社L is B (エルイズビー) |
5 | Chai | カスタマーサポート、社内ヘルプデスク支援 | フリープラン月額0円/ ベーシックプラン月額9,800円 | ○ | デフィデ株式会社 |
社内の問い合わせ対応に強み
No | サービス名 | 主な強み | 料金 | 無料 | 企業名 |
1 | PEP (ペップ) | 社内ヘルプデスク支援 | 初期費用:30万円/ 月額費用:10万円~ (ユーザーのメッセージ送信数に応じた段階式従量課金制) | × | 株式会社ギブリー |
2 | Support Chatbot | 社内の問い合わせ(情報システム、総務、人事、経理など)、カスタマーサポート | クラウド型:初期費用数万円~ /オンプレミス(自社運用)型:100万円~ | × | 株式会社ユーザーローカル |
3 | Desse (デッセ) | 社内ヘルプデスク支援、カスタマーサポート、マルチリンガル対応(7言語) | 標準タイプ年間1,000万円~ (初年度だけ環境構築4か月含む) | × | SCSK株式会社 |
施設案内やカスタマーサポートにも対応可
No | サービス名 | 主な強み | 料金 | 無料 | 企業名 |
1 | minarai | カスタマーサポート、施設案内 | 非公開 | ○ (minaraiCS チャット) | 株式会社Nextremer(ネクストリーマー) |
2 | Repl-AI(レプル・エーアイ) | カスタマーサポート、施設案内 | Free版:月0円/ ベーシック版:月1万円 | ○ | インターメディアプランニング株式会社 |
3 | AIさくらさん | カスタマーサポート、社内ヘルプデスク支援、受付対応 | 初期導入費用90万円/ 月55万年 | × | 株式会社ティファナ・ドットコム |
以下、今回の記事執筆に参考にした情報です。