来るニューノーマルに備える!アフターコロナ以降の企業社会の変容
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的な流行が続いています。ワクチン開発など明るいニュースも出てきてはいますが、新型コロナウイルス感染症は一時的な流行に留まらず、長期間に渡り、人間が付き合っていく可能性が高いものだと考えられていす。
新型コロナウイルス感染症の流行により、私たちの生活環境は大きく変化しました。今後も続くであろうウィズコロナ・アフターコロナの時代は、さらなる変化を求められるでしょう。感染症対策が継続して必要であることはもちろんですが、この機会に、今まで進まなかった働き方改革が結果的に前進するなど、大きなチャンスにつながる変革も起こりつつあります。
今回は、コロナ時代の新しい状態「ニューノーマル」について考えてみます。
目次
ニューノーマルとは
ニューノーマルとは、「New(新しい)Normal(状態)」、つまり、今までの常識が大きく変わり、新しい常識が求められることです。
たとえば、新型コロナウイルス感染症を予防するために必要とされる「新しい生活様式」には、すでに多くの方が実践している、マスクの着用や手指消毒の徹底、ソーシャルディスタンスを保つことなどが含まれますが、これらは日常生活におけるニューノーマルと言えるでしょう。
過去にもあったニューノーマル
さて、ニューノーマルという新しい常識が求められる大きな変化は、過去にもありました。
1990年代の「インターネットの普及」が、1度目のニューノーマルです。検索エンジンサービス、電子メール、携帯電話が普及しました。現在でも、インターネットはビジネスや生活において必要不可欠になっています。
2008年の「リーマンショック」が、2度目のニューノーマルです。リーマン・ブラザースの経営破綻から世界的な景気後退となり、日本でも多くの企業が経営ダメージを受けました。金融・経済の構造が大きく変わりました。
ウィズコロナ・アフターコロナ時代のニューノーマル
そして、今般の新型コロナウイルス感染症の流行は、3度目のニューノーマルの到来となります。ウィズコロナ・アフターコロナ時代のニューノーマルは、感染症対策のための基本的な行動様式に加えて、働き方改革などビジネスにおける変革や、観光・飲食などのあり方など、その影響は私たちの生活の広範囲に及びます。
ビジネスにおけるニューノーマル
それでは、ウィズコロナ・アフターコロナ時代のニューノーマルについて考えます。まずは、ビジネスにおける変革を見ていきます。
働き方改革
感染症の拡散を防止すべく3密(密閉・密集・密接)を避けるため、多くの企業で、「テレワーク」や「リモートワーク」が導入されるようになりました。テレワークは「情報通信技術(ICT = Information and Communication Technology)を活用した在宅勤務、モバイルワーク、サテライトオフィスの総称」を指し、リモートワークはIT業界やベンチャー企業でよく使われる「遠隔業務」のことです。その結果、通勤交通費や移動時間が削減されるとともに、オフィススペースの見直しや削減の動きも出てきています。
長時間労働の解消やワークライフバランスの実践、労働生産性の向上など、「働き方改革」の必要性は誰もが実感しながらも遅々として進みませんでした、しかし、新型コロナウイルス感染症の流行下において、結果として大きく前進しました。オフィスに通勤するという概念がなくなることは、都心の一極集中によるさまざまな課題の解決につながる可能性もあります。
デジタルトランスフォーメーション(DX)
テレワークやリモートワークを進めるためには、そのための環境整備が必要であり、「デジタルトランスフォーメーション(DX)」が進んでいます。
経済産業省によれば、デジタルトランスフォーメーションとは、「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」と定義されています。菅政権においてデジタル庁が設置されるなど、政府や行政においても、デジタルトランスフォーメーションが大きく注目されています。
また、「印鑑を押すためだけに出社する必要がある」などと旧態依然とした慣習に基づく社内ルールが批判の対象になっていますが、デジタル化を推進するためには、業務プロセスやルールの大胆な変更も必要となるでしょう。「はんこレス」のほかにも、「ペーパーレス」「キャッシュレス」「タッチレス」「FAXレス」などが進んでいます。
業務プロセスやルール変更のために有効なのが、チャットボットの導入でしょう。密になりがちな顧客向けコールセンターの機能は、チャットボットによって一部代替することで、人件費やスペースコストの削減にもつながります。
また、社内手続きにおけるFAQをチャットボットを利用して整備することで、対面で質問ができないぶんを補完したり、マニュアルのなかから探す時間を短縮したりできます。24時間365日、サービスを提供できることも魅力でしょう。さらに、チャットボットとのやり取りをデータで蓄積することで、商品・サービスの開発や見直し、社内手続きの改革にもつながるでしょう。
BCP
新型コロナウイルス感染症の流行により、企業のBCPに対する意識が向上しました。
BCPとは、「Business Continuity Plan(事業継続計画)」であり、自然災害などの発生に備えて、企業の事業方針や対応体制を事前に準備しておくことです。日本では東日本大震災を機に実践する企業が増え、多くは、地震・台風・豪雨などの自然災害を想定して策定されていました。
たとえば、オフィスやデータセンターが被災した際に備え、遠隔地にバックアップ施設を整備することなどが挙げられます。また、被災で重要書類を喪失する可能性に備え、紙のみでの保管ではなく、データでクラウド上に保管している企業も多いでしょう。
新型コロナウイルス感染症の流行を受け、自然災害のみでなく、未知の感染症の蔓延についてなど、より幅広い事態を想定したBCPの策定が必要であるとの認識が広がりました。感染症の流行は自然災害に比べ被害エリアが広くなり、想定される影響が長期化する可能性も考慮しなければなりません。
観光・飲食におけるニューノーマル
新型コロナウイルス感染症で多大なる影響を受けた代表的な業界が、観光業や飲食業でしょう。政府や行政によるGo To トラベルやGo To Eatなどの施策も実施されていますが、感染拡大防止との両睨みの状態が続きます。
観光や飲食においては、業界と顧客が双方に感染症対策を講じることはもちろんですが、サービスのあり方そのものも大きく変化しています。
観光
観光においては、海外を含め遠方への旅行が難しくなっているなか、近場を観光する「マイクロツーリズム」が増加しています。移動を最小限に抑えることで感染拡大リスクを回避するとともに、感染状況に地域差がある状況下で受入側の不安感も軽減できるアイデアです。近場である分、利用頻度の増加も期待できるでしょう。
観光地やリゾート地で休暇をとりながらテレワークやリモートワークを行う「ワーケーション」も人気です。ワーケーションとは、「work(仕事)」と「vacation(休暇)」を組み合わせた造語です。非日常で気分転換をしながら仕事ができますが、インターネット環境の確保が必須です。
また、対面での接客が難しくなるなか、観光案内をチャットボットなどデジタルで代替することが注目されています。外国語への対応も比較的容易ですし、データとして情報を蓄積し分析することで、訪問地のレコメンド機能などを付与でき、効率的にビジネスチャンスを拡大できます。
飲食
飲食においては、店内における感染症対策の徹底に加えて、テイクアウトやデリバリー、ネット通販などを行う店舗が急増しました。店内飲食ではソーシャルディスタンスを確保するため入店人数の制限などが必要ななか、顧客スペースを必要としないこれらのサービスは、スペース効率の観点からも魅力的です。
また、デジタル化も進んでいます。非接触での接客を可能にするため、チャットボットなどを活用し、店舗が設置したタブレット端末や顧客のスマートフォンでのセルフオーダーや決済が増加しました。データで蓄積した注文情報などを分析することで、メニューにレコメンド機能を付与したり、新メニューの開発や見直しに活用したりすることもできます。また、現金の授受を必要としないキャッシュレス決済の導入も促進されています。
まとめ
新型コロナウイルス感染症の流行により、私たちは、3度目のニューノーマル導入を余儀なくされました。しかしそれは、働き方改革やデジタルトランスフォーメーションなど、進めるべきとされていたことが必要に迫られ急速に進展したり、新サービスや商品の導入など、危機を乗り越えるためのアイデアが生まれたりと、好ましい変化を多く含みます。
新型コロナウイルス感染症は世界規模の大きな危機であり、自分自身ではどうにもできなくて、苦労をされている方も多いでしょう。しかしながら、そのなかで、少しでもチャンスを見つけて変化に対応し、ニューノーマルとポジティブに向き合うきっかけを見つけたいものです。