2020.11.16(最終更新:2022.09.02)

チャット型コマース(会話型コマース)とは何か?注目される理由と導入メリット、活用事例を紹介

ここのところEC業界を中心に注目を集めているのがチャット型コマースです。チャット型コマースとは、顧客がメッセージアプリなどのチャットを使って会話形式で買い物や問い合わせできる機能のことです。

なぜチャット型コマースが注目されているのか。その背景と利用のメリットなどについて詳しく説明します。

チャット型コマース(会話型コマース)とは何か

チャット型コマースとは「チャット」と「コマース(商取引)」を組み合わせた造語です。オンラインショップのことをECサイトと呼びますが、ECとはエレクトロニックコマース、つまりインターネットなどの電子媒体を活用して買い物すること。チャット型コマースはECの一種で、「チャットを活用した買い物や問い合わせ」を意味します。

すでに身近なところで活用されているチャット型コマース

日本では主にLINEやFacebookがチャット型コマース機能を提供しています。Facebookでお店の公式ページにアクセスした際、メッセージウインドウが立ち上がって、何かしらのメッセージが表示された経験のある方も多いのではないでしょうか。まさにそれこそがチャット型コマースです。

チャット型コマースを活用した買い物の一例を挙げましょう。

あなたは宅配ピザが食べたくなり、宅配ピザのFacebookページにアクセスしたとします。するとメッセージウインドウに「ご用件は?」というチャットが送られてきました。ただアクセスしただけで用事がない場合はチャットをスルーするかウインドウを閉じてしまえばOKです。

今回はピザが食べたいので、「メニューを見せてください」と返信します。すると、即座に、「こちらがメニューです」というチャットと、メニューが掲載されたページへのリンクURLが送られてきます。

メニューを確認し、食べたい商品の名前をチャットで送ります。さらにチャットで会話のやりとりをしながら、住所や電話番号など注文に必要な情報を入力し、決済方法を選んでクレジットカード番号を入力し、決済を完了します。

ここまでの流れをすべてチャット内で会話形式で完結できるのがチャット型コマースなのです。

チャット型コマースの核「チャットボット」

チャット型コマースの特徴は、顧客からの注文や問い合わせを24時間365日受け付けているということです。といっても、コールセンターのように常に人間が裏にいて対応しているわけではありません。

チャット型コマースの核ともいえる技術が「チャットボット」です。チャットボットとはいわゆる対話型のAIで、顧客が入力した文章の意味を読み取り、自動で適切な返信を行うプログラムです。

チャットボットには「ルールベース型」と「AI型」の2種類があります。ルールベース型とは、「顧客からのチャットにこの単語が含まれていたら、あらかじめ用意してあるテキストから『A』というパターンで返信する」というように、プログラミングされた一定のルールに基づいて対応を行うチャットボットです。ルールから逸脱することがないので、顧客への対応を誤ることがありません。そのかわり、ルールにない文章が送られた場合は対応できず、定型文を返すだけになってしまいます。

一方の「AI型」は、チャットボット自身が顧客とのやりとりを学習し、チャットの文脈を読み取って自動でテキストを生成するというものです。ルールベース型と違って、普段使いの言葉で書く文章にも対応しやすく、実際に会話をしているような形でやりとりができるというメリットがあります。もし、うまく顧客の意図を読み取れないと、とんちんかんな回答をしてしまう可能性もあります。

一般的にチャット型コマースでは、どちらか一方のタイプ、あるいは両方のタイプを組み合わせて活用しています。ただし、どうしても顧客とのコミュニケーションがうまくいかない場合は、途中から人に交代することもあります。

なぜチャット型コマースが注目されているのか

現在、様々な分野でチャット型コマースが盛り上がりを見せています。なぜこれほどまでに注目されているのか、その背景について説明します。

購買経路とコミュニケーションの多様化

かつて、買い物といえば顧客が店舗を訪問して対面で行うか電話注文が一般的でした。しかし、現在はインターネットの普及により様々な購買経路が生まれています。そのうちの一つが「チャット」なのです。

チャットのメリットは、自分の都合の良いときにメッセージを送ることができ、相手の時間も奪わないこと。そのため、対面や電話、メールよりもコミュニケーションのハードルが低いといえます。

また、昨今のコロナ禍でECのニーズが増していることもチャット型コマースが注目される要因の一つです。対面を避け、オンラインで注文や問い合わせ、決済をしたいというニーズが高まっているのです。

そうした状況を受けて、これまで対面接客がメインだった業界も、Withコロナの世界に適応するためデジタルへの転換を進めています。たとえば飲食店がデリバリーや通販を始めるケースなどはまさにそうした流れの一つといえます。

チャットでもパーソナライズされた接客が可能に

これまで、ECの弱点とされていたのが「接客」でした。昨今、「モノ消費」から「コト消費」への流れが起きており、顧客は画一的ではなく個人にパーソナライズされた「体験」を求める傾向が強くなっています。

対面接客であれば、目の前の顧客に合わせてきめ細やかな対応ができますが、機械的に情報を入力していくだけのECではパーソナライズされた体験を提供することが難しかったのです。

この常識を覆したのがチャットボットの登場でした。AI型のチャットボットは顧客が入力した文章から文脈を読み取り、さらに過去の顧客の購買履歴などのデータと組み合わせて、パーソナライズした対応が可能です。

かつて「人対人」でしか実現できなかった高レベルな接客やリアルな会話が、「人対AI」でも可能になりつつあるのです。

このような背景が重なったことで、チャットをECに活用するチャット型コマースが急速に注目されるようになったのです。

チャット型コマース導入でどのようなメリットがあるか?

チャット型コマースを導入することで、具体的にどんなメリットがあるのでしょうか。ここでは事業者と顧客、それぞれの視点から説明します。

事業者にとってのメリット

現在、スマートフォンアプリは飽和状態にあり、多くのアプリはそもそもダウンロードされないか、ダウンロードされてもすぐに消されてしまいます。自社アプリをダウンロードしてもらうために多くの広告予算をつぎ込んでも、残念ながら費用に見合った効果が得られないことも多いのです。

一方、チャット型コマースは多くの場合、LINEやFacebookといった人気アプリをプラットフォームとします。つまり、自社のアプリを顧客にダウンロードしてもらう必要がありません。チャット型コマースを導入するということは、人気アプリの集客力を利用できるということでもあるのです。

さらに、チャット型コマースでは基本的にAIが対応をおこなうため、コールセンターなどの人件費を削減できます。

チャットボットは真夜中でも対応できますし、コールセンターと違って顧客を待たせることもありません。データ連携などを活用することで、顧客一人ひとりに最適化された接客も可能です。その分、顧客満足度を高められるというメリットがあります。

時にチャットボットが人よりも高度な接客ができるケースもあります。たとえば人の場合、新人であれば仕事を覚えるまで時間がかかりますし、覚えられる量にも限界があります。そういった場合、むしろチャットボットの方が顧客満足度を高められる可能性が高いでしょう。

顧客との関係性を長く保てることもチャット型コマースの長所の一つです。顧客に向けてお知らせやキャンペーンなどのメッセージを発信することで、継続的に顧客とのコミュニケーションができるのです。

顧客にとってのメリット

多くの顧客にとってチャットは、電話やメールよりも気軽にコミュニケーションできる手段です。たとえば、レストランに電話をかけて予約するのが苦手という人は少なくありません。そういった人でもチャット形式であれば会話相手がAIなので気軽に予約ができます。

また、顧客にとって「いつも使っているアプリ」のなかで買い物ができるのは大きなメリットです。新しくアプリをインストールしたり、ECサイトにアクセスしたりする手間がかからないからです。

オペレーターの知識不足など属人的な問題で問い合わせに対して待たされることがなく、24時間365日いつでも対応してもらえるのも顧客にとってのメリットといえるでしょう。さらに過去のデータをもとに、自分自身にパーソナライズされた接客が受けられるのもメリットです。

いずれも事業者にとってのメリットが、そのまま顧客にとってのメリットにもなっている点といえます。

導入の注意点

様々なメリットのあるチャット型コマースですが、導入する場合は注意すべき点もあります。

まず、顧客対応を完全に無人化できるわけではないということです。チャットボットの精度は近年かなり高まってきていますが、それでも完璧に「人対人」と同様のレベルでの会話はまだ難しいからです。チャットボットが対応しきれなくなった場合、途中から人に交代して対応するケースもありうることを知っておきましょう。

顧客一人ひとりにパーソナライズされた接客についても注意が必要です。単にチャット型コマースを導入すれば、いきなりパーソナライズできるわけではありません。AI型のチャットボットの精度を上げるためには、きちんと整えられた顧客データが大量に必要となります。どんなデータを用意すればいいのか、データをどんな形に整えればいいのかなど、AIに関する知見が必要になります。

チャット型コマースの活用事例

実際にチャット型コマースを活用して成功を収めた事例を紹介します。

米国の宅配ピザチェーン最大手であるドミノ・ピザは、2015年にTwitter経由の注文受付を始めました。さらにApple TVやGoogle Home、Amazon Echoなど様々なプラットフォームで注文を受け付けるようになり、現在ではFacebookのメッセンジャーアプリでチャット型コマースを活用しています。

ドミノ・ピザのような宅配ピザではこれまで、電話やインターネットで注文を受けることが一般的でした。特に電話での注文は人が対応する必要があり、調理の手を止めて生地やトッピングの選択、住所、連絡先などをすべて電話越しに聞き取ってメモしなければいけません。この手間と時間は決してばかにならないものでした。

これを解消すべく、ドミノ・ピザではチャット型コマースをはじめとするWebでの施策に注力。その結果、ドミノ・ピザは急成長を遂げることになったのです。

顧客のニーズが多様化し、Withコロナ時代を迎えて、ECの世界は大きく変わろうとしています。変化に対応し成長を続けるためにも、チャット型コマースの導入を検討するべきでしょう。

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