2020.07.16(最終更新:2022.05.27)

チャットボットをマーケティングツールとして活用するには?成功事例を用いて解説

急速に普及しつつあるチャットボット。企業のホームページで見かけることも多くなりました。チャットボットは、24時間365日、顧客対応が可能で接客機会をのがさずに人件費の抑制につながる大きなメリットがあります。

このメリットを活かした顧客獲得やブランディングなどのマーケティング分野での利用が注目を集めています。

当記事では、チャットボットのマーケティング活用を事例と一緒に紹介していきます。

チャットボットのマーケティング分野での活用法

チャットボットのマーケティング分野での活用法

チャットボットとは、お客様の質問に対して自動的に答えを返し、コミュニケーションをするシステムです。

最近ではホームページ上でのお客様対応や「Siri」のようなスマホのAIアシスタントなど用途は多岐にわたります。ここでは、マーケティング分野での活用方法を紹介します。

商品やサービスの説明

ホームページに来訪したユーザーの質問に答えて、商品やサービスの説明を行い購買行動へつなげます。

購入や予約への誘導

ホームページに来訪したユーザーの質問に答えて、最適な商品を提案し購買行動へつなげます。

顧客エンゲージメントの醸成

顧客とのコミュニケーションを行うことで、商品やサービスへの愛着を醸成します。

見込み客の獲得

購入を検討している見込み客の連絡先などの情報を取得し、営業活動に活用します。

ナーチャリング

MA(マーケティングオートメーション)やCRM(顧客管理システム)と連携し、来訪客の行動履歴を基に最適な案内を行い購買行動へつなげます。

チャットボットをマーケティングに活用するメリット・注意点

おそらくチャットボットはよくある質問に答える、または問い合わせ対応を自動化する、といった用途が世間一般のイメージでしょう。

しかし、前述の活用法のようにマーケティングの要素を取り入れた活用も十分可能なのです。
チャットボット をマーケティングで活用する際のメリットと注意点を確認しましょう。

チャットボットのメリット

チャットボットのマーケティング活用のメリットは5つあげられます。
それぞれ説明します。

  • 365日24時間接客ができる
  • コストダウンがはかれる
  • ニーズを知ることができる
  • 狙ったゴールへ誘導できる
  • パーソナライズ化した情報提供

365日24時間接客ができる

チャットボットならば、365日24時間の顧客対応が可能です。従業員が稼働できない時間帯でも迅速に受け答えでき、機会損失を減らせます。

コストダウンがはかれる

今まで必要だった有人サポートの人件費を抑制できます。

ニーズを知ることができる

お客様の入力データを蓄積し分析することで、隠れたニーズの発見や、行動履歴を元にお客様の購入意欲を数値化したスコアリングもできます。

狙ったゴールへ誘導できる

誘導したいページや商品にお客様を誘導できます。CRMとの連携で、購入履歴を基に次に必要な商品などを提案することもできます。

パーソナライズ化した情報提供

AI型のチャットボットであれば、会話から聞き取ったニーズや趣味趣向に合わせやパーソナライズな情報を提供できます。ユーザーの求めている情報をAIから提供することで意思決定をサポートするため、単なる一問一答形式のチャットボット では実現できないレコメンドを可能にします。

※AI型の機能については各種チャットボットサービスごとに異なります

チャットボットの注意点

一方、チャットボットのマーケティング活用には注意点もあります。考慮した上で導入しましょう。

  • 導入と運用にコストが発生する
    一般的に、導入のコストや、月額の運用コストが発生します。
  • 導入や設定に時間がかかる
    AIの設計・設定などに時間がかかります
  • 回答の質が性能に左右される
    AIの性能が低い場合、適切な回答ができない場合や機械的な対応しかできない場合、印象を悪くする可能性があります。

チャットボットを使ったマーケティング|コンバージョン獲得

チャットボットを使ったマーケティング|コンバージョン獲得

売上げに直結するのがコンバージョン獲得ですが、単に「コンバージョン」と言っても次のように複数の意味が含まれます。

  • リード獲得
  • 申し込み(予約、受付)
  • 購買

リード獲得のためのチャットボット

リード獲得はサイトの問い合わせフォームから企業名、担当者名、メールアドレスなどの見込み顧客の情報収集を指します。

チャットボットの導入イメージとしては、ユーザーがチャットボットと対話をしながら質問や疑問を解消し、資料請求やサービス登録などを行うといったフローです。

これまでのWebサイトの入力フォームに替わって、ユーザーにとって操作性のよい、親しみあるインターフェースになります。

リード獲得のためのチャットボットは、営業担当者がフォローアップする連絡先の収集を目的とした BtoB ビジネスに最適なツールです。そのため、多くの企業で活用されています。

新たな申し込み(予約、受付)チャネルとなるチャットボット

このコンバージョンは、インターネット上から予約や受付などの申し込みを獲得するものですが、これだと従来の広告、SNS、SEOなどのWEBマーケティングで事足ります。

しかし、チャットボットは従来の方法とは異なる新しいチャネルです。

チャットボットはユーザーとの自然な対話を得意とし、そこから関係性を紡いでいきます。そしてマーケティング上では、見込み顧客が商品やサービスもしくは企業やブランドに親しみを感じ、検討段階に入って購入意欲が高まると新規顧客へと移行するとされています。

全日本空輸株式会社(ANA)は、ハワイ旅行への予約数を増やすため、自社運営のハワイ旅行キャンペーン用のハワイ情報サイト「#hawaii24」に2018年からAIチャットボットを導入しました。

ハワイでのショッピング・グルメなどのカテゴリや、友人と一緒なのか子どもを含めた家族で楽しみたいのかといった旅行メンバーの確認など、チャットボットがユーザーの興味・状況・気分を把握。そこから最適なハワイ旅行の行程提案をしていきます。

結果として今までリーチできていなかったと思われるユーザーとの接点機会が増加し、これらの対話によってファンも次第に増え、ハワイ旅行予約というコンバージョンを生みだしました。

新たな申し込み(予約、受付)チャネルとなるチャットボット

※画像元:goo AI x DESIGN「AIチャットボットの7つの成功事例!導入目的と成果を紹介

自然な対話により購買を促すAIチャットボット

購買はショッピングサイトの売上げ向上に直接つながるものです。

AIチャットボットでは「機械学習」と「ディープラーニング(深層学習)」と呼ばれる技術が使われており、ユーザーとの自然な対話が可能です。話し言葉を理解して適切な回答を返すため、ユーザーは納得できる快適なショッピングを堪能できます。

株式会社ユニクロでは、2017年からスマートフォン向けアプリのなかにAIチャットボット「UNIQLO IQ」の試用を開始し、2018年から本格展開しています。

コーディネート、カテゴリ、人気ランキングなどからはじまり、ユーザーとの対話から最適なアイテムをおすすめします。そのままオンラインストアで購入できたり、近隣の店舗の在庫状況を確認できたり、ユーザー体験を一貫して支援します。

アプリを開くと右下に「教えて IQ」ボタンが表示され、クリックするとコンシェルジュと呼ばれるチャットボットの「案内係」がアイテムを紹介します。

自然な対話により購買を促すAIチャットボット

※画像元:株式会社ユニクロ「AIコンシェルジュ「UNIQLO IQ」の試験運用を開始

チャットボットを使ったマーケティング|顧客エンゲージメントの醸成

チャットボットを使ったマーケティング|顧客エンゲージメントの醸成

顧客エンゲージメントとは、顧客が企業やブランド・商品・サービスに、どれくらい接触し愛着を持っているかを表す指標です。顧客エンゲージメントが高い顧客は、商品やサービスを積極的かつ長く消費し、また第三者にその良さを広めてくれる役割を果たします。

企業にとって、エンゲージメントの高い顧客を育てることは極めて重要です。

顧客エンゲージメントの醸成で必要なことは、良いユーザー体験を提供することです。良いユーザー体験を提供することで、愛着を育みブランドが構築されます。

自社のブランドサイトなどに設置されたチャットボットはユーザーが接触する重要な「顔」にあたり、ここでのユーザー体験が、顧客エンゲージメントを高めることにも下げることにもつながります。

チャットボットがより人間に近い丁寧な会話をできれば、エンゲージメントが高まりますが、機械的で精度の低い会話しかできなければ、エンゲージメントは下がってしまうでしょう。

ここではチャットボットでのユーザー体験で、エンゲージメントを高めた事例を紹介します。

エンタメコンテンツで、視聴者のエンゲージメントを高める

エンタメコンテンツで、視聴者のエンゲージメントを高める

※画像元:goo AI x DESIGN「AIチャットボットの7つの成功事例!導入目的と成果を紹介

日本テレビ放送網株式会社は、テレビドラマの主人公をキャラクター化したAIチャットボットをLINE上に展開し、キャラクターと視聴者が会話を楽しめるコンテンツを提供しました。

このAIキャラクターは、ドラマの話にあわせて成長し、また視聴者との対話を機械学習し、より自然な回答ができるように賢くなっていきます。

この施策でのLINE友だち登録は44万人、総発話数は1億回を超え、多くのユーザーに利用されてドラマ作品のエンゲージメント向上に貢献しました。

よりパーソナライズされた情報提供で自社へのエンゲージメントを高める

よりパーソナライズされた情報提供で自社へのエンゲージメントを高める

※画像元:goo AI x DESIGN「AIチャットボットの7つの成功事例!導入目的と成果を紹介」

医療品や衛生商品を製造販売する小林製薬株式会社は、自社商品「命の母」のブランディングサイトにAIチャットボットを設置し、女性の健康に関する悩み相談に応じるサービスを展開しています。

従来のチェックコンテンツでは、年齢や簡単な症状をもとに商品をおすすめする単純な内容のため、一人ひとりのお悩みや症状に合わせたレコメンドはできていませんでした。一方「命の母AIお悩み相談」は、AIチャットボットが24時間365日、悩める女性一人ひとりによりそったアドバイスを的確に行い、必要に応じて最適な商品をレコメンドします。

自身の症状や悩みについて、他の方と比較できるレーダーチャートを表示でき、安心感や共感など、ただ単に症状のタイプや製品をおすすめするだけでなく会話形式でお悩みをヒアリングするチャットボットの“人間味”が伝わる設計になっています。

このサービスは、開始からわずか1カ月で2万人を超える顧客をサポートしました。

これからのチャットボットに求められること

今後も24時間365日、顧客対応が可能なチャットボットは、企業と顧客との接点としてカスタマーサポートやマーケティングなどの様々な分野で活用が広がっていくでしょう。

ゆえに、企業は顧客とのコミュニケーションの場としてより良いチャットボットを提供していく必要があります。では顧客がチャットボットに期待することは、どのようなことでしょうか?

「チャットボット実態調査2019」によると、「AIチャットボットに期待したいことは?」という質問に対して、以下の回答が寄せられました。

AIチャットボットに期待したいことは?

※画像元:goo AI x DESIGN「チャットボット実態調査2019」より

このデータから、ユーザーは、AIチャットボットに対して、人に寄りそった「人間らしい対応」を求めていることが伺えます。

企業の「顔」としての役割を担うチャットボットが、「人間らしい対応」ができればブランディングに寄与し、機械的対応しかできないならば良い印象を与えることはないでしょう。

マーケティングで、チャットボットを活用する際は、より人間らしい対応ができる性能をもったチャットボットを導入し運用することが重要です。