チャットボットが新型コロナウイルス対策で業務負担を軽減
2020年3月1日、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて厚生労働省は3密を避けるよう勧告し、これを機に防止対策が本格化しました。それから1ヵ月後、保健所の業務負担が深刻となりました。
この時に活躍したのが「チャットボット」と呼ばれる自動応答システムです。帰国者の健康状態の管理に活用され、回答のない者に対してだけ職員が直接連絡するという流れに変え、業務負担を軽減しました。以前は帰国者全員に都度対応していたことを考えると飛躍的な効率化です。
今後、企業での働き方が変わり、オンライン需要が高まるなかで、このチャットボットを導入・応用したらどのようなメリットが受けられるのかを、この記事では解説していきます。
目次
最前線で戦う保健所をAIがサポート
4月中旬、保健所では「1年分の業務量が1ヵ月に集中した」と指摘されるほどハードな業務状況となりました。主な要因として、海外からの帰国者やコロナの疑いのある相談者からの24時間の問い合わせ対応、その内容のデータ入力、検査を受ける人の搬送対応、クラスター調査など、業務がたいへん多岐にわたったことが挙げられます。
都市部のある保健所では、スタッフを増員して問い合わせにあたったものの、毎日1,000件以上かかってくる電話対応はすぐにキャパシティを超える状態となりました。
この事態を憂慮した厚生労働省は、5月中旬開始を目標にIT企業の協力を得てクラウドやAI(人工知能)を活用した保健所の支援を発表。そして4月13日、LINE株式会社がいち早く帰国者の健康状態の確認をサポートするシステムを開発、導入しました。
これは主に AI を活用したシステムで、そのなかのひとつは、AIチャットボットを使って本人や同居人の症状を確認できるものでした。
回答が得られない場合は、音声 AIによる自動通話で本人に確認し、それでも応答がなければ保健所の職員が直接電話をするという流れを構築したのです。これにより、電話対応が大幅に軽減できたというのです。
※参照:日本経済新聞「保健所をデジタル変革 激務のコロナ対応、支援相次ぐ」より
チャットボットが新型コロナウイルス対策を支援
ある調査によりますと、2020年3月のチャットボットの利用者が急増し、前月と比べて38%も増加したというデータがあります。
またこの利用者が増えた要因として主に次のポイントを挙げています。
ウイルス関連商品への問い合わせ
外出自粛により、ECサイトの会員数と利用者数が増加し、俗に「巣ごもり消費」と呼ばれるECサイトで完結する購買行動が拡大しました。とくに、新型コロナウイルス関連商品であるマスクやハンドソープ、除菌剤、体温計などへの問い合わせが激増し、「在庫はあるのか?」「いつ届くのか?」といった連絡がひっきりなしに押し寄せました。
通信・テレビ・インターネット動画に関連する問い合わせ
家で過ごす時間が長くなったことに伴い、Wi-Fiなどの通信サービスの見直しや通信機器の買い換えに関する問い合わせや、テレビ、インターネット動画の接続などに関する問い合わせも増えました。
コールセンターの縮小や一時閉鎖
携帯大手キャリアを中心に、新型コロナウイルスの感染対策として店舗の営業時間短縮やコールセンターの有人対応を縮小、またはセンター自体が閉鎖されました。
これらの補完として、通常は有人対応と無人対応(=チャットボット)を併用していたのを、無人対応のみに切り替える企業も現れました。
明確なことは、今回のような有事への対策としてチャットボットが有効に活用され、さらにユーザー、企業従業員、企業の三方にとってメリットが得られたという事実です。
では次の章でチャットボット導入の具体的なメリットを説明します。
※出典:りらいあデジタル「新型コロナウイルスの影響によりチャットボット利用が急増」より
チャットボット導入「3つのメリット」
ここではチャットボットを導入する主なメリットについてわかりやすく解説します。
1.対人が難しい状況でもチャットボットで接客
4月7日に緊急事態宣言が発出され、都市部のさまざまな業種の店舗が営業自粛せざるを得ない状況となりました。当然、自粛期間中は売上がほぼ見込めません。
このような状況下、たとえばアパレル関連においてチャットボットを活用した接客がおこなわれました。
あくまでECサイトの支援機能であることが前提となりますが、ユーザーからのよくある質問に対しては無人チャットボットに対応させ、チャットボットが答えられない質問に対しては、経験豊富なスタッフが対応することで、きめ細かな対応が可能になります。ユーザーにとってはどちらもリアルタイムで欲しい回答を得ることができ、結果として購入につながることが期待できます。
※参照:日本経済新聞「東京都、10日に休業要請 飲食店営業は午後8時まで」
2.増加するオンライン需要を取りこぼさない
7都府県に緊急事態宣言が発出された週(4月6日の週)と、新型コロナウイルス感染拡大による影響が出る前の週(2月25日の週)を比較したところ、平日昼間帯のトラフィック総量(インターネット利用量)が最大33%も増加した、とNTT東日本が発表しました。
今後、新型コロナウイルス感染が収束しても、企業のテレワークの普及や新型コロナウイルス感染の第2波・第3波、また新たな有事対策のため、および業務効率化のため、オンライン需要はますます増加傾向にあるでしょう。
このオンライン需要をしっかりキャッチして取りこぼしを防ぐのもチャットボットは得意とします。
AIを搭載した「AIチャットボット」は、ユーザーとの対話が可能で、また相手の話の内容から趣味や趣向を把握し、適切な提案ができます。
たとえばユーザーの「夏っぽいいい感じの洋服はある?」といった漠然とした質問に対しても、チャットボットは雑談を交えながらニーズを探り、ユーザーが好みそうなタイプのトップス・パンツやおすすめショップを提案することができます。
この対話の流れから顧客エンゲージメントが培われ、最終的に目標のコンバージョン獲得(ここでは商品購入)の達成につながるのです。
※参照:business network.jp「NTT東、新型コロナのインターネットトラフィックへの影響を公表」より
3.問合せ増加にチャットボットで対応
チャットボットは24時間365日対応できるため、今回の保健所でのケースではまさに業務負担の軽減に貢献しました。
また物販では、大量の問い合わせを無人のチャットボットが自動対応し、優先度が高い、または緊急性の高いお客様には有人でスタッフが丁寧に対応することで顧客満足度の向上が見込めます。
そのほかに、たとえば企業サイトやECサイトなどで電話やメールでの問い合わせが面倒という層を抱え込み、チャットボット上で問い合わせを完結させたり、対話をしていく流れから商品購入や会員登録へとつなげることが期待できます。
▼関連記事はこちら
まとめ
今後、新型コロナウイルスの第2波、第3波が警戒され、無事に収束したとしても、いつまた今回のような有事で企業が不測の事態に陥るかわかりません。
また企業にとってテレワークが当たり前になってくるのも時間の問題でしょう。
そのような状況を鑑みて、チャットボットの導入を検討することは従業員や関係スタッフ、お客様、ひいては企業自体を守るBCP(Business Continuity Plan/事業継続計画)につながります。
もっとチャットボットについてお読みになりたい方は「AIチャットボットのすべて!導入前に知るべき6つのポイント」へお進みください。
【参考情報】企業の新型コロナウイルス関連のニュース
- 日本経済新聞「サイバー、電話応対業務をAIで自動化」
- 日本経済新聞「コロナ禍、ネット接客広がる裾野 不動産やアパレル」
- 日本経済新聞「コールセンター、AI活用広がる 富士通が応答システム」
- 日本経済新聞「コロナ質問に自動応答 千葉県 6カ国語に対応」